2017年 春学期 情報技術の現代史

シラバス

 現代史は世界規模でものごとが連関し、人々が国境を越えて活動する時代にはいってからの世界について研究する学問です。この講義では、その中でも科学・技術、さらに情報技術に関するテーマに絞り込んで諸問題を扱います。歴史学ですので、扱う資料はまずは文献ですが、近過去を対象にしているため、映像・音声資料、インタビュー記録、その他のデジタルデータなども史料となりますし、文献資料の中には技術論文、設計図なども含まれます。  本年度のテーマは「戦争とコンピュータ」。情報学の古典的文献を取り上げながら、現在のコンピューティングのスタイルがどのようにできあがってきたのか、それに関わった人々は、どのような技術的背景・知的状況の中で思考し、技術的なアイデアを生み、社会の中で実装につなげてきたのかを考えます。  歴史学は、事実を暗記する学問ではありません。人間の社会は複雑で、実に多様なことが同時並行して起こっています。原典に丁寧に当たり、実際には何が起こっていたのかを様々な角度から検討していく過程は、探偵が証拠を探し、様々な可能性を考えながら事実関係を究明していくのに似ています。「なぜ?」「実際にはどんな感じだったのだろう?」と、好奇心旺盛に私たちの来た道を探ってみたいという「考える受講生」の参加を期待しています。

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4月7日 資料の扱い方 

Wikipediaにおける「信頼できる情報源」

Wikipediaではどのような情報源に基づいて記事を書くべきかについて、Wikipedianに説明しているページ。信頼できる情報源の説明に、歴史資料の説明があり役に立つ。しかし、この分け方によれば、Wikipedia自身はさほど信頼性が高くないことになるところが皮肉。

4月14日 「技術と戦争」イントロダクション

Pugwash会議

ラッセル・アインシュタイン宣言をもとに組織された、平和に関する科学者の社会的責任についての組織。日本パグウォッシュ会議のサイトに載せられたラッセル・アインシュタイン宣言も参考になるだろう。

Dwight D. Eisenhowerの退任演説のオンラインリソース集

カンザス州にあるDwight D. Eisenhower, Presidential Library, Museum and Boyhood HomeのWebサイト。大統領資料の一環として、国立公文書館が統括するリソースのひとつとなっている。このFarewell Addressのページは、一次資料が豊富にオンラインで公開されていて、充実している。

4月21日 コンピュータと暗号解読

Codes and Ciphers

Bletchley Parkの博物館学芸員だったTony Saleによる、Bletchley Park関連の歴史サイト。特にこの中の、Virtual Bletchley Parkは、暗号解読の歴史に詳しい。

Jack CopelandによるColossusサイト

ニュージーランドのCanterbury大学で哲学教授であるJack Copelandがまとめた、当事者らの証言で綴るColossusの本を紹介したサイト。ここからリンクされているオンラインリソースにはColossus関係の情報が手際よくまとめられている。特にこの部分に書かれている「Colossusに関する、よくある間違い」には、それまでの歴史書に書かれてきた誤解(つまり俗説となって広まっている誤り)を指摘してある部分があり、興味深い。ちなみにCopelandのTuringに関するWebリソース集であるAlanTuring.netも信頼性のおける情報源として広く知られている。

4月28日 Giant Brains

Edmund Berkeley Papers

Charles Babbage Instituteにあるバークレイ書類のFinding Aid(目録)。この書類の中身の解説を読めば、バークレイの活躍がコンピュータ分野が出来上がる時期に幅広く広がっていたことが理解できる。

米国海軍のDahlgren研究施設

NSWCDD(Naval Surface Warfare Center Dahlgren Division)は海軍の兵器研究開発設備で、テストや分析、システムエンジニアリングなどを行っている。いわゆるHarvard Mark Iとして知られるASCC(Automatic Sequence Controlled Calculator)もDahlgrenが担当しており、上述のバークレイがここに従軍していたとき関わっていたプロジェクトである。

IBMのASCC

IBMアーカイブのASCCのWebサイト。HarvardでHoward Aikenが実装を行ったIBMへの言及無くメディア発表したことで、溝ができたことで知られる、いわゆるHarvard Mark Iとして知られるリレーを論理素子とした計算機。プログラムの開発を担当したMary Grace Hopperが、ASCCのプログラミングについて語っている様子が、コンピュータ歴史博物館が公開しているComputer Pioneers: Pioneer Computersの第1部に収録されている。授業中にも少し見せたように、有名な最初のバグはハードウェア(リレー)に挟まったホントの虫(bug)だった、という有名なエピソードが語られている。

ASCCのマニュアル

Internet Archivesに残されているASCCのマニュアル。コンピューティング史関係の資料は、次々に電子化されているが、ますます真贋を見極める眼も必要とされているともいえそう。

ENIAC裁判の歴史資料

ミネソタ大学のCBI(Charles Babbage Institute)にある、ENIAC Trial Exhibits Master Collection, 1864-1973の説明へのリンク。

Computer Pioneer, Pioneer Computer

Computer History Museum(米国カリフォルニアにあるコンピュータ博物館)が公開している歴史的画像。授業で見せたのは、ENIACのプログラミングの様子(8'50"から12'50"あたり)。

The Computer Boys Take Over

Nathan EnsmengerによるENIAC girlsにかかわる歴史書。出版元のThe MIT Pressの紹介ページへのリンク。

When Computers Were Human

David Alan Grierによる人間の計算手(computers)の歴史を扱った本。これも出版元のThe Princeton University Pressの紹介ページへのリンク。

コンピュータ歴史博物館のENIACページ

興味がある人は、前後を見てみると、他の初期のコンピュータについてもいろいろと興味深いオンライン展示があるので、是非。授業で紹介したENIAC girls(ENIAC women)のひとりJean Bartikのインタビューもこの中にある。これは字幕もあるので、英語の聞き取り勉強にもなっていいかも♪ もちろん内容もかなり興味深い。コンピュータは歴史が短いので、歴史研究者が注目し始めたときに、関係者が存命でインタビューできたりするのだ。

大阪大学総合学術博物館に展示されているENIAC型演算装置について

情報処理学会が開設しているオンラインのコンピュータ博物館に書かれた阪大のENIAC型演算装置の記事。『計算機械』を著した城憲三、牧之内三郎らによる試作機なので、その著作と併せると原理や意義がよくわかる。

5月12日 英米以外の初期コンピュータ開発

Pioneers of Soviet Computing

オンラインで公開されているソヴィエトのコンピューティング史。SHOT(Society for History of Technology)のSIGCIS(Special Interest Group for Computing, Information and Society)のウェブサイトからリソースとして公開されている。

Konrad Zuse Internet Archive (1998-2015)

ベルリン自由大学のRaul Rojas教授が1993年と1994年にKonrad Zuseに会い、Z3の一次資料をもらったことがきっかけとなって、Rojas教授が集めた資料が公開されている。また、Z3の再構築プロジェクトの記録も公開されている。

情報処理学会 コンピュータ博物館

日本のコンピュータサイエンスの学会で最大の情報処理学会が公開している、1950年代からのコンピュータ発展の歴史の記録。ハードウェアとパイオニアの記録が中心。歴史特別委員会では、授業でも紹介した本も出版。最新のものは2010年にオーム社より発行された『日本のコンピュータ史』

5月19日 人間機械混成系

OSRDの記録

授業内で紹介したアメリカの、科学者・技術者の戦時動員組織に関する公式記録。こうした公文書の公開ではアメリカは一歩先を行っている。

ハーバード心理音響研究所の記録

こちらも授業で紹介した戦時動員研究組織として作られた研究所に関する記録の公開サイト

オートメーション・パラドクスに関するPodcast

IEEE SpectrumによるPodcast, Techwise Conversationが2011年12月22日にオートメーション・パラドクスを取り上げた。英語の書き起こしもついているので耳だけで聞き取りがしんどい人も安心♪

5月26日 折り返し地点ワークショップ

稲垣敏之「自動化による安全性の向上 ヒューマンファクタの視点からの考察」

授業前課題に参照してもらった論文へのリンク。

電王戦についての日本将棋連盟の公式Webページ

これまでのコンピュータソフトと棋士との公式戦の記録が載っており、今年度の電王戦が公式最終戦であったことも確認できる。

Ponanza作者の山本一成さんの公式ツイート

著書の『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか』に関するツイートも出ている。ここからリンクされているブログにも人間と機械の共生に関しての考えが書かれたエントリーあり。

アーロンの生みの親、ハロルド・コーエン

2016年4月に亡くなったコーエンのWebサイト。コンピュータ画家アーロンが、コーエンと生み出した作品の数々などを見ることができる。